「紙布(しふ)」のお着物。
今日は三丈反物の墨打ち2反に加え、解き端縫いの御用が一枚あった。まだ躾糸のかかったその単衣のお着物は 紙布のお品物であった。初めて手にするそのお品物のことを辞典で調べてみた。
紙布(しふ)…強い紙を細くテープ状に切り、撚りをかけて<こより>のように糸にしたものを織った紙織物。経緯(たてよこ)とも紙糸を織ったもの、経糸に絹糸、綿糸を用い緯糸に紙糸を用いたものなどがある。芯地、敷物、装飾雑貨に用いる。
抄繊(しょうせん)織物…紙をテープ状として撚りをかけて織物専用の糸(抄繊糸)をつくり、これで製織した織物。帯、芯、着尺地などに用いられる。
文化出版局 最新きもの用語辞典より
今回のお品物には経糸に絹糸が織り込まれていたが、緯糸はかなり太い糸であった。
ご注文は「洗い」と仕立て直しであるが、水に浸けてはいけないように思われるので 筋消しをした後に仕立をする。独特の風合いをもつ、印象深いお品物である。
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コメント
「紙布(しふ)」
南座の顔見世で以前この紙布(しふ)が出てきました。
或るIT新聞に拙文が掲載されておりますのでよろしかったらご覧くださいませ。
世界遺産に登録された歌舞伎 京の顔見世で坂田籐十郎襲名披露 2005/12
「これまでの中村鴈治郎さんから新・坂田籐十郎丈になった舞台は、先ず『夕霧名残の正月』の伊左衛門の役。
今はうらぶれて紙衣を着ている籐十郎。これは「かみこ」と呼ばれる和紙で作った着物だが、淡いブルーが品よくて侘びた味があった。
豪奢でない質素の代名詞のような紙衣を来た伊左衛門が劇中で「口上」を述べる。」
https://www.janjan.jp/culture/0512/0512216639/1.php
投稿: tsubaki wabisuke | 2007/03/29 10:30
tsubaki wabisukeさま
コメントをありがとうございます。
2005年ですと一昨年になりますか、顔見世・坂田籐十郎襲名披露の舞台、その劇中に着用されたとの記事を拝見いたしました。あいにくと劇中の伊左衛門の役柄は存じませんが、紙布というお品物には格をもった歴史ももつようでございます。http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B4%99%E5%B8%83(Wikipediaフリー百科事典より)
また、この劇中のお品物は「紙衣」とございますが、「紙布」とはまた、違ったお品物のように記してございます。私は舞台を拝見しておりませんので 手元の紙布との違いなども分かりませんが、主人が製造元に直接 紙布のお品物の取扱い上の注意点を確かめました折に、紙布は単衣で着用して夏は涼しく冬は暖かいお品物であるということでございました。
お着物をそれぞれにお楽しみいただく方がいらっしゃる中で、このような工芸品がその技術と共に生き続けることを知りました。
また、この紙布は経糸は絹糸でございましたが、緯糸には絹糸を芯に紙繊維が撚ってございました。
投稿: 白生地や | 2007/03/29 12:47
インターネットを流れ流れてお邪魔させていただいた所、ついつい気になったものですから、通りすがりにて失礼させていただきます。
半可通の素人が釈迦に説法のごとき振る舞いをと思われましょうが、どうぞご寛恕ください。
上記の「紙衣」とこちらでお取り扱いされた「紙布」の違いですが、「紙衣」はまたは紙子とも申しまして、和紙をベニヤ状に張り合わせた上でコンニャク糊や寒天でつなぎとし、油引きの防水布の様に柿渋を塗ることで、丈夫でかつ寒気を通さないといった特性を持つ防寒に適した素材です。
江戸時代から戦前にかけては紙衣で出来た合羽などがよくあったそうですが、さながら和のギャバジン・トレンチコートの様な感じでしょうか。
なお、歌舞伎には(ベニヤ状に張り合わせた)ツギハギだらけの衣装(食い詰め浪人の服など)として紙衣と思われる装いが出てくるそうですが、おそらく上記リンクの衣装はそれではないかと思われます。
ただ、「かげろふの我が肩に立つ紙子かな」と芭蕉の句に歌われているように、割合とありふれた素材だったようですが、使い捨てできる着道楽としての服という側面もあったようで、一概に廉価なだけの服というわけでもなかったようです。
対してこちらでお直しをされた(と思われる)「紙布」は通常の布糸と紙糸を縦横で違えて織る布です。
(両方を紙糸とする諸紙布というものもあったそうですが)
特性はお調べいただいたように夏涼しく冬暖かく、汗を吸っても匂わずむしろ目が締まるということで、お直しされた商品のように単衣の浴衣などに最適とされる素材ですね。
また、(ものとやりようによってはでしょうが)洗濯機の洗いも出来うるという話です。
(伝聞系にどうしてもなってしまうのは、最大の産地であった白石が近年ほぼ作り手が絶えてしまっており、実物はむしろ博物館などでの展示が多くなってしまっているためです。江戸時代は紙衣と比べ高級品とされ産地では輸出用特産物として生産の奨励もされていたそうですが…余談ですが私自身も最後に見たのは東京にある紙の博物館の企画展示でした)
以上、いささか乱雑ではありますが、紙衣と紙布の違いについて一通り説明させていただきました。
ご参考にしていただければ幸いです。それでは失礼いたします。
投稿: 瘋癲 | 2007/04/01 01:23
瘋癲さま。
「とらさん」などで耳慣れた言葉でございましたが、漢字のお勉強もさせていただきました。
「紙衣」と「紙布」の違いを具体的にご教示いただきましてありがとうございます。紙衣では和紙と柿渋の取り合わせでも 人々の生活に生かされていたのですね。
ところで手元の紙布は京都でも取り扱われており、以前は流通してございました様子ですので、厳密には白石での生産品とはまた異なるお品物かも知れません。
私が手にするお品物には「染め」にもそれぞれに技巧をもち、まだまだ家族から教わるばかりの日々でございますが、tsubakiwabisukeさまのコメントを受けて瘋癲さまのようにまた一歩踏み込んだご丁寧なコメントをいただきまして、嬉しく存じます。
お立ち寄り頂きましてありがとうございました。
投稿: 白生地や | 2007/04/01 11:45
ふうてん様
興味深いお話をお聞かせくださり有難うございました。
「紙衣」と「紙布」に違いがあろうとは思いもよらなかったことです。ご親切を感謝いたします。
白生地や様
先日は花便りを確かに…。かえってお気を遣わせてしまいました。
着物の歴史は日本人の生活そのものといえましょうか。紙は天然素材ですから廃棄しても環境汚染にはなりません。風呂の焚きつけにしていた長閑な頃を思い出します。
投稿: tsubaki wabisuke | 2007/04/01 22:53
tsubaki wabisukeさま、ありがとうございます。
おかげさまで初めて手にしたお品物、紙布について紙衣とあわせて知る好機となりました。嬉しいことでございます。
tsubaki wabisukeさま、瘋癲さまにはそれぞれに感謝申し上げます。ありがとうございました。
投稿: 白生地や | 2007/04/02 09:32