白生地屋の箱。
自営業なら当たり前の風景なのかもしれないが…。
師走の声を聞き始めるころから、急き物の注文が相次ぐものだ。
秋期の作品展前は、刺繍や染色関係のお客様がそれぞれに手がけられた作品をお預かりし、悉皆(加工)に廻して仕上げまでお世話させていただくことに追われるが、仕事にかかる日にちは十分にみて下さるのが常である。
が この時期は違う。
小売店からは売り出し用なのか 仕立物などの注文が、作家さんからは追加の形で悉皆と仕上げが、日限のムリを半ば承知で入ってくる。そこで父と夫がお品物持参で急き物の世話に走り回ることとなる。
そういうお品物が日を同じくして仕上がってくると、店内に箱が増殖する。
広くない店内には 常より白生地が積まれており、雑然としたなかに数種類の箱がしばし散在する。
白生地屋 常用の箱である。白地に七夕柄(金銀の色紙柄)の大きい箱にはショールが、小さい箱には小風呂敷(小巾の風呂敷)が入る。手前杉皮模様の大中小の箱にはそれぞれ三巾・二四巾・尺二巾の風呂敷および服紗(袱紗)が入り、茶色の化粧箱は尺二巾用として別誂している。他に紙箱には茶服紗用に正方形の化粧箱などがある。
デリケートな桐箱は必要なときに入手する。白山紬三巾風呂敷・鬼しぼちりめん二四巾風呂敷・鬼しぼちりめん尺二巾風呂敷を 鏡餅のように重ねて一つの桐箱に仕組んだものである。風呂敷には家紋と名を、もしくはいずれかを入れた京都古来の風習に従ったものである。外包みに羽二重を用いるのも良いものである。別誂えの鬼しぼちりめん尺二風呂敷だけを入れる桐箱などもある。
お仕立てをした帯を入れる箱も様々だが、近ごろお手持ちの袋帯を、名古屋帯にではなく 文化帯に仕立て直すご依頼も承ることがある。これはその中で、二重太鼓にした文化帯である。
もちろん、ここで年を越すだろうお品物は悉皆を行き来しつつ 更に部屋を埋め尽くす…。
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