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2017/12/09

2017年12月5日 清野恵里子さん『咲き定まりて 市川雷蔵を旅する』 発売。

清野恵里子さん著 『咲き定まりて 市川雷蔵を旅する』 が発売されました。
これまで 清野恵里子さんにはご自身の造詣の深さと美意識から著わされる きもの、古美術、工藝の魅力に惹かれてきたものですから わたしにとって市川雷蔵は 黒い着流し姿で刀身を光らせながら見せた円月殺法の眠狂四郎で、この 『咲き定まりて』 、清野さんが今なぜ市川雷蔵なのか それがいちばん気になるところでした。

そこでさっそくお届けいただいた『咲き定まりて 市川雷蔵を旅する』を拝読いたしました。

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実は11月も終わりのころ、清野さんから 「きれいな本ができました!」 と弾んだ声でご一報をいただいておりました。
A4判・ハードカバー・324ページの本を手にして まず、市川雷蔵の白黒フィルム画像のカバー表紙を開いたその瞬間、すてきな驚きとともに 清野恵里子さんの 「市川雷蔵への旅」 に惹き込まれました。

序章で語られるのは いちばん気になっていた 清野さんが 『市川雷蔵という「ひとり」の役者への尋常ならざる傾倒が始まった』 背景です。さてそれから3年にわたり 市川雷蔵その人の 1954年のデビューから病のため帰らぬ人となった1969年までの159本もの作品や膨大な数の資料をもとに研究を深められて書かれています。まったく知らなかった市川雷蔵の姿が清野さんの手でひとつずつ明らかになっていきます。

『咲き定まりて』は 市川雷蔵その人の、姿麗しい俳優の枠を超えて 資質をもったうえに努力を重ねて才能が開かれるに伴って 時代の移り変わりによる日本映画の栄枯盛衰を具体的に知ることができます。
構成は 序章に始まり 作品の年代によって 映画界デビューの1954年から1959年の間に8稿、映画隆盛期1960年から1962年の間に12稿、眠狂四郎が始まった1963年から1969年に8稿、終章に続き 市川雷蔵略歴、市川雷蔵フィルモグラフィ、参考文献、エンドロールにかえて、が付記されています。

『咲き定まりて』は贅沢にも 全編すべてに実際の映画から画像が挿しいれられています。カラーではありませんが、その点は 着物の柄、色の取り合わせにとどまらず、着物での立ち回りなどをすっきりと魅せる裏方さんのアイデアや 映像の背景に盛り込まれた効果や技術など 清野さんがすっかり明かしてくださっています。この時代ならではの 職人のような裏方のこだわりが至る所で生きた手作り映画とでもいった感じを味わえてとても面白いです。

また、市川雷蔵を軸に 共演者の顔ぶれがまた楽しいのです。
勝新太郎との共演四作目にあたる「柳生連也斎 秘伝月影抄」の稿などでは若い勝新太郎の画像が見られ、二人のエピソードもとても味わい深く、京マチ子、若尾文子、中村玉緒、その他当時の瑞々しい若さが溢れた画像もすてきで必見です。


映画そのものが好きという方にとっては映画最盛期にあって 引っ張りだこであった俳優 市川雷蔵作品の制作現場の様子がエピソードとともに明かされており、他では知りえない素顔やスタッフとの親交の深さ、人となりに触れることとなり、たいへん味わい深い内容となっています。雷蔵作品を通した溝口健二、三隈研次などの監督たちの逸話も欠かせず、わたしは個人的にとても懐かしい工藤栄一監督についても記述があり それだけでもうれしいものです。

とにかく膨大な量の資料の中から 清野恵里子さんの感性で著わされた雷蔵その人と雷蔵映画。とても濃い内容です。読後いちばん感じたことが 市川雷蔵の早世がとても残念だということです。


12月5日より発売されています。
ぜひ お手に取って清野恵里子さんの雷蔵論に触れてみてください。

咲き定まりて -市川雷蔵を旅する‐
清野恵里子 著
定価 本体2,400円+税
ISBN 978-4-7976-7348-7 C0095
発行 集英社インターナショナル
発売 集英社

 

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